まっちゃんの桜の木陰日記

自然豊かな富山を舞台にランニング、サイクリング、そしてカイロプラクティックを施すミドルエイジアスリートの日記

憧れ続けた100マイラーの夢を叶えた信越五岳2018⑥(戸隠〜ゴール)

2日目の夜も11時を過ぎ、当初の目標にしてた日曜のうちにゴールすることはもはや不可能です。この頃には月曜の朝3時半までの時間内完走に目標は切り替わってました。この先は信越五岳のラスボス、瑪瑙山が立ちはだかりますが、ここを乗り越えれば夢にまで見た100マイルの完走がハッキリと視界に入ります。戸隠エイド直後の林道は泥濘みだらけでうんざりもしましたが、ラストが見えてくるとなんとか頑張れました。

 

幸い、眠気はやってこなかったんですが、この辺りからついに私にも幻覚が見えるようになってきました。トレイル傍の草木が獣やトカゲに見えたり、道の真ん中の葉っぱがタコに見えたりします。一瞬驚いてドキッとしますが、よーく見たら幻覚だったことに気付く事の繰り返しでした。脳が疲れてしまい、目からの情報を誤って処理してるんでしょうね。夜間に寝不足だと幻覚が見えるようになると聞いてはいました。自分にも見えたら正直怖いなーと思っていたんですが、いざ体験してみると恐怖は感じませんでした。それどころか「次は何に見えるかな!」と、楽しむも余裕あったかな。

 

瑪瑙山の稜線に出るとなかなかの強風が吹いていて、このコース屈指の登りに差し掛かったこともありなかなか前に進みません。それでもやはり我慢強く登っていればピークには達します。真夜中ではありましたが、なんとか瑪瑙山の山頂に到着すると、ちょうど雲が切れて光り輝く星空が見えました。空を見上げ、「すげぇ…」と思わず息を飲みましたが、吐く息は真っ白…。風も強く、かなり気温が低下していました。停滞するとあっという間に体が冷えてしまうので、すぐさま下山開始です。でも、そんな環境下でも山頂にボランティアスタッフの方々がスタンバイしてたのには頭が下がりました。

 

瑪瑙山をクリアした事で、あとはほとんど下りパートになります。ちょっとした登りはありましたが、あとはひたすらの下り…。衝撃吸収しきれなくなった足にはキツいパートでしたが、残りあと僅かと思うと頑張れます。ついに最終のウォーターエイドに到着すると、残りはあと林道を走る7㎞を残すのみです。やっとでここまで来れました。

 

さあ、泣いても笑ってもあと7㎞です。最後の補給を手早く済ませエイドを出た私は、「全てを出し切って空っぽになってやるぞ」と奮起し、ラストスパートを仕掛けます。スパートと言っても、当初は「残りは歩かないぞ!」ぐらいのつもりだったんですが、不思議と徐々にペースが上がっていきました。先行するランナーを1人、また1人とパスしていくうちに、どんどんスピードに乗っていきます。自分でも「まだこんなに残ってたんだ!」とこれだけ走れることに驚きます。おそらくキロ5分くらいのペースは刻んでいたかな?背後からは誰も追ってきません。過去の信越完走者のコメント読むと誰しもが、このラストの林道がキツく、絶対に7㎞以上あるだろうと話してますが、私にとってこの林道はまさしくビクトリーロードになってました。高揚感、無敵感に包まれ、人生でもそうはない幸せな時間でした。

 

この林道だけで約50人はパスしたでしょうか?自分でもそろそろ着く頃かな?と感じ始めた時、スタッフの方から「おかえり!あと1㎞切ったよ」と声を掛けられます。「あぁ、ようやくここまで来れた。本当に終わるんだね…」と込み上げてくるものがありました。

 

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暗闇の先に現れた光る輝くフィニッシュゲート。果てなく思えた旅がようやくフィナーレを迎えます。ラストまで全力で!とゲレンデを駆け下りて来た私でしたが、ゴールテープ手前で減速し、160㎞を共に進んできたゼッケンホルダーを外し、これを両手で高々と掲げてテープを切りました。ついに100マイラーになれた瞬間でした!

 

ゴールの瞬間は案外冷静に迎えることができたつもりでしたが、フィニッシュ後、出迎えてくれた彼女の顔を見たら一気に感情が溢れ、込み上げる涙を抑えきれませんでした。これは長年憧れ続けた自らの夢を叶えた喜びの涙でもあったでしょうし、夢の実現をサポートしてくれた彼女への感謝でもありました。今にして思えば、恥ずかしい所見られたなぁ…。

 

所要時間は実に31時間9分。制限時間が32時間なのでギリギリといえばギリギリですが、100マイルの完走者の多くがこのあたりのフィニッシュタイムに集中していたようで、私のゴール後も続々とランナーが飛び込んできました。

100マイルの完走率は57%とのこと。このコースは走らされるパートが多いので、やはり走れる箇所は走らないと時間がなくなります。全て歩いていたらおそらくアウトでしょうね。

 

何はともあれ無事ゴールできて、念願の100マイラーになれました。次回はゴール後のことや、今回使用した装備品の検証についてです。